精神科関連書籍・映画

医学部生が推薦する精神科関連(疾患・病院・病床)書籍(教科書・参考書・新書)

読みやすい漫画はこちら

勉強用図書(教科書)

まずは、教科書的な、精神科医学を学ぶベースとなる本を紹介します。

精神科版「病気がみえる」

医療従事者の多くが知っている「病気がみえる」。精神科に関しては、シリーズとして出版されていません。ただ、「病気がみえる」並みにイラストが載っており説明も簡単な書籍があります。それが「精神神経疾患ビジュアルブック」です。

基本的にすべての精神疾患について分かりやすくイラスト豊富に書いてあります。総論として、精神医学の考え方や、診察・検査方法・治療法について解説してあります。各論として、それぞれの疾患について分かりやすく書いてあります。

分厚い参考書に比べて遙かに分かりやすいです。精神科志望の学生は詳細に読めばかなり勉強になり、そうでない学生でも、さらっと読むだけでかなり知識が定着すると思います。

難しい精神科用語がわかりやすく記載の入門書

精神科を学ぼうと思ったときに、一番難しく感じるのは、「専門用語」です。一言に「妄想」といっても「妄想観念」「妄想知覚」「妄想着想」「被害妄想(被毒妄想・嫉妬妄想・・・)」と挙げればきりがありません(症候学についての詳細は→精神科診察の症候学・診察の観点とその順番)。

そのような「専門用語の悩み」を解決するのが「精神疾患にかかわる人が最初に読む本」です。

精神症状による障害(用語)はほとんどすべて以下のカテゴリーに分類されます。(カッコ内はそのカテゴリにおける異常の例)精神科実習でまわった際の先生曰く、精神科診察の際にはこれらのカテゴリを意識しながら診察するそうです(症候学についての詳細は→精神科診察の症候学・診察の観点とその順番)。

  • 「知覚の障害」:錯覚・幻覚
  • 「思考の障害」:観念奔放・滅裂思考
  • 「自我意識の障害」:させられ体験
  • 「感情の障害」:不安・多幸
  • 「意欲・行動の障害」:緊張病
  • 「意識の障害」:せん妄
  • 「記憶の障害」:健忘・作話

それぞれの用語内で、「こんな病気の患者さんが、この症状になりやすい」まで書いてあります。本の後半には、精神科疾患各論までまとめられており、非常に分かりやすいです。(看護学生向けに書かれた本なのでしょうか。看護師国家試験の問題と解説まで書いてあります。解説は「患者さんのセリフ目線で」書いてあり勉強になります。)

独自勉強用図書

ここからは「試験には出ない知識でも精神科について学びたい」という人向けの本を紹介します。

精神科一般

この「精神科臨床を学ぶ 症例集」は自分にとってかなり思い出の本になります。僕は元々、「精神科の研究に興味はある」「でも精神科臨床にはそこまで興味が無い(というか、精神科臨床をあまり知らない)」学生でした。「精神科興味あるから、少し症例集読んでみるか」と手に取ったのがこの本です。

とても多くの症例が具体的に載っています。正直、症例を読んでいろいろと想像すると、胸が苦しくなることも多いです。(それが臨床に興味を持つきっかけになりました。)
また、各症例についての考察があったり、引用文献がたくさん明記されていたりと、「学問」としての面白さもあります。

  • 「精神科に興味ありそうだな」
  • 「でも今ひとつ、精神科に進むか迷うな」

と感じた人に読んでほしく思います。

児童精神編)精神科の概念や歴史から、児童精神まで

子どものための精神医学

児童精神科分野でまず第一に推薦するのが、「子どものための精神医学」です。

全く、「児童精神」もしくは「精神科」の知識が無い状態からでも読めます。ですが、個人的おすすめとしては、児童の発達(「何ヶ月で幼児は言葉を話せるの?」など)の知識や児童精神科のざっくりとした知識(自閉スペクトラム症・ADHDなど)を知っておくと、より楽しく読めるかもしれません。

本の序盤(第1~3章)では、精神科全体的な話が書かれています。精神科の、他の科との違いやその奥深さ等、かなり勉強になると思います。児童精神科に興味はないけど、精神科志望の人でも、1-3章だけは、絶対に読むべきです。例えば、「どうして精神科はover diagnosisが起きてしまうの?どうしたら防げるの?」などと書いてあります。

「一文々々に納得を重ねていける」本になっています。(そのため個人的に読み進めるのにかなり時間がかかりました。)時間がかかる本でもあるので、買ってじっくり読んでほしくもあります。

テキストブック 児童精神科臨床

より実用面に向けた・臨床に沿った本が「テキストブック児童精神科臨床」になります。

テキストブック児童精神科臨床

こちらの本は、「子どものための精神医学」に比べると、かなり実践向けの本になっています。

  • どんな風に(順序で)診察すると良いか
  • 診察時に気をつけることは何か

といった内容が書かれています。それ以外にも、EBMの限界や操作的診断の限界・そこに付随した哲学なども書かれており、非常に面白いです。

こちらの本も、本の序盤や途中に「全ての精神科に当てはまる事項」もたくさん書いてあるため、児童精神に興味が無い人でも楽しく読めると思います。

精神科システム・医療政策について

精神科の医療システム・政策については当ブログでいろいろ書きました(精神科病院・医療制度の考察)。その参考図書を列挙します(内容については、各記事に書いてあるため詳細には書かない)。

これらの本は、興味があったら読むと面白いかもしれない。ある程度、日本の精神科病床の問題意識や、海外との比較に興味がある場合は、いろいろと考えるための良い本になる。

世界の精神科の歴史

  • 中世のアウトサイダー  中世の精神科を学ぶならこの一冊
  • わが魂に会うまで:アメリカのクリフォード・ホイティンガム・ビーアズが、自らの精神病院での過酷な体験書いた本(1980年)。病院の患者に対する暴行や強圧について描かれています。当時のアメリカにおける精神科の現状を理解するのにこれ以上の本はありません。
  • 絵とき精神医学の歴史:精神医学の歴史について、かなり分かりやすく書いてある本。見開き2ページごとに、精神科関連の歴史的出来事や、人物名などが書いてある。簡素な絵も附属しており、読むのに飽きない。

日本の精神科の歴史

精神科一般の歴史

日本の精神科の歴史こちらのページを書くときに参考にした書籍です。

  • 日本精神科医療史:古代から中世にかけての精神科の歴史について、これほどまでに詳しく述べている本はない。古代から中世の歴史に興味があればこの一冊で間違いない。近代の内容もある。
  • 医学思想史―精神科の視点から:医学史に興味があればおすすめできる。
  • 日本の精神科入院の歴史構造: 社会防衛・治療・社会福祉:多くの書籍の出典が載っている。かなりデータに基づいて緻密に書かれている文章である。「医療施設を新設するための費用」等、なかなか普段興味を持たないと分からない内容まで踏み込んでいる。近現代の精神科の歴史に興味があるなら、この一冊を推薦する。
  • 日本の精神医療史―明治から昭和初期まで:どちらかというと、朝鮮半島における精神科医療に多くのページが割かれている。挿話が面白かったりする。

入院・隔離に関する本(経験談)

精神科について話す上では、入院・隔離といった「自由が制限される」話題も避けては通れません。過去には、客観的に見て、良くない入院・隔離もありました(現状を是とするかはともかく)。

「精神科入院」ではありませんが、ハンセン病の入院について書かれた本を紹介します。まずは「長い道」です。

長い道

こちらの本は、すごく明るい文章・読みやすい文章です。表現が豊かで、文章を想像しやすく面白いです。文章を読むと、当時の情景がありありと目に浮かびそうな文章です。また、(僕は全くこの作者について知りませんが、)「作者の方はすごく前向きで謙虚な方なのだろうなあ」とも思わされてしまう文章です。

しかし、同時に、文章の裏にある背景・文章に書かれていない登場人物の気持ちなどを想像すると、とても胸が締め付けられる本でもあります。同じくハンセン病の隔離入院を扱った本に、「いのちの初夜」(文庫)(kindle: 無料)という本があります。当人たちの置かれた状況・日々を想像すすろ、非常に胸が苦しくなる本です。ただ、そのような事実があることもまた、目を背けてはならない事実で、これらの本を私は推薦します。

新書・文庫本

ここでは精神科関連の新書を紹介します。

ケーキを切れない非行少年たち

僕が児童精神分野や犯罪精神に興味を持った大きなきっかけとなった本、それが「ケーキの切れない非行少年たち」です。少年犯罪と認知機能の関連について書いています。

医療少年院に勤務経験のある児童精神科医による本です。特に筆者が、医療少年院での勤務を通して、非行少年とその対策(予防策)について考察した本です。(内容をさらっと書くと以下)

  • 知能や認知能力が低いと、他者と上手くやっていけず学校や社会から落ちこぼれ、非行に走ってしまうことがある
  • その後も、「反省する」認知機能も高くないため、同じ過ちを繰り返してしまう
  • 認知機能の低い子供たちが、非行に走らなくするためには、どうすればよいか

そもそも、医療従事者はじめ多くの人が「少年院」というものになじみがない人が多いのではないでしょうか。そもそもタイトルからして、センセーショナルです。「ケーキが切れないってどういうこと?」

実はこの本は、漫画(ケーキの切れない非行少年たち 1巻: バンチコミックス)にまでなっており、その表紙がこちらです。「ケーキが切れない」とはこの表紙のような状態です。

少年犯罪を犯した子供たちと、長く・深く関わった専門家の経験や意見が書いてあり、非常に面白いです。また、認知機能検査についても触れられていたりして、意識して読むと(医学部生にとっては)勉強にもなりました。

僕のエピソードを書くと、「精神科になんとなく興味あるなあ。臨床も研究も面白そうだなあ。統合失調について勉強したいなあ。」と思っていた時期に読んで、「児童精神やりたい!!!!!」と強く感じた一冊になった思い出の本です。

天才と発達障害

かなりセンセーショナルなタイトルと言えるでしょう。例えば、「天才は発達障害だったんだ(坂本龍馬はADHDだったんだ)」といった噂話はまれにきく話でしょう。そのような話をふんだんに盛り込んだ話がこの本になります。

発達障害疑いの人がかいた小説や映画・音楽についても紹介されており、この本で紹介されている作品を改めてみると面白いかもしれません。(個人的な意見ですが:本自体はかなり単調な本なので、最初は興味のあるページから読んでも良いかもしれません。途中から読んでも内容は把握できる本になっており、読みやすいです。最初から最後まで一気に通して読もうとすると、興味がない人には少し辛いかも。)

自閉症は津軽弁を話さない

私は知識が無かったので、はじめて知りましたが、自閉症の子供はあまり方言を話さないそうです。この本で、「それはなぜか?」といった疑問、そこからの調査や考察が描かれています。

言語習得には、音声などの認識が必要だったり、社会性も必要だったりと多面的です。その多面性の中で、様々な考察をめぐらせ、調査をして、話が進んでいくのが面白かったです。(ちなみに続編もあるようです。)

アル中ワンダーランド

メモ記載(漫画の文庫本化)