- 新生児:生後0日から28日未満の生後4週間の児のこと
- 乳児:出生から満1歳未満までの児のこと
- 幼児:乳児期満了(満1歳)から学齢(小学校就学)までを指します。
私たち人間は、普段何気なく、「言葉」を用いてコミュニケーションをとっています。日常生活の中では、主に母語(mother tongue)を使う人が多いでしょう。この母語は、「無意識的に」身についた物です。
一般的に、「言語学習」の場面において、我々は文字を学んだり、単語を学んだり、文法を学んだりして言語を習得しなければなりません(例えば英語学習)。一方で、母語は自然に身に付いています。人間には「言葉を発達させるための生得的な力が備わっている」と言うことです。
一方で、児童発達分野では「言葉の発達」に困難が生じている子供がいたり、その発達に個人差が大きかったりします。言語発達の著しく進む乳幼児段階の言語・コミュニケーションについてまとめました。(注:乳幼児の発達には個人差が大きいです。)
教科書的な言語発達
先にも書きましたように、子供の言語発達には大きく個人差があります。ただ一方で、以下のような発達の目安が存在します。(教科書的な目安を記します。)
年齢 | 行為 |
新生児期 | 泣くのみ(頭頸部の構造上、うまく話すことはできない。この時期の子供は、「哺乳」に敵した構造になっていて、話すことはできない |
2ヶ月 | クーイング |
6ヶ月 | 喃語(「ママー」「バブー」など伝達委とのない言葉) |
1歳 | 1語文 |
1歳半 | 3語話せる(パパ・ママ・ワンワン) |
2歳 | 2語文 |
3歳 | 自分の名前が言える |
5歳 | 自分の名前が書ける |
「母子健康法」では、①乳児②1歳半③3歳児に健診を行なっています(①は推奨、②③は必須)この健診において、運動発達や言語発達等がチェックされます。言語発達については以下のようにチェックされます。
- 1歳半:3語以上の有意語・物の名前が分かるか
- 3歳児:名前と年齢が言えるか
ここでできていないと「言語発達に遅れがあるかもしれない」と疑うわけです。
泣くのも重要なコミュニケーション!
「言語の発達」「コミュニケーションの試み」は子供はいつから始めているのでしょうか?乳幼児は言葉が話せないうちからでも、コミュニケーションをとろうとしています。当たり前の話ですが、乳幼児は自身一人で生きていくことはできません(周りの大人に見放されたら生きていけません)。そのため、声を出したり、泣いたり、笑顔を見せること、また表情・声・視線で、「お世話してください!」と周囲にメッセージを発しているのです。
泣く
「泣く」ことについては、生後2週間頃から始まり、2ヶ月頃にピークを迎えそこから減少していくとされています(The normal crying curve: what do we really know?)。
子供は、泣くことで、大人を近くに引き寄せ、安全を確保し、安心しているのです。
体を動かす
子供は大人の反応にあわせて、泣くのみならず、体を動かしたりして応答したりもします(Look at me: five-month-old infants’ sensitivity to very small deviations in eye-gaze during social interactions)。逆に、大人が子供を見ていないときは、子供は体の動きを減少させるとも言われています。
また子供は親の真似もしています(Imitation of facial and manual gestures by human)。これにより以下のような効果を得ているとされています。
- 親の愛着を引き寄せる(ミラー効果)
- 親の真似をして言語発達を目指す
意味のある「言葉」を発達させていく
成長していくと、少しずつ「言葉」を発するようになってきます。
1語文について
1語文は主に「社会語」と「普通名詞」に分けられます。
- 社会語:人に関する言葉「パパ」「ママ」や社会的やりとりの言葉「どうぞ」
- 普通名詞:動詞や形容詞
一般的には、普通名詞は社会語に比べて、出てくるのが遅いとも言われています。(A cross-linguistic study of early lexical development)
ただ、この一語文があることによって、子供と親で「意味のある言葉」を用いて意思疎通ができたりします。
1歳半で来るボキャブラリースパート
1歳半前後になると、ボキャブラリースパート(Vocabulary spurt:語彙爆発)があるとされています(ただ頻度は5人に1人程度)。この時期に子どもの話し言葉の語彙が急激に増えていきます。(ボキャブラリースパートがなくても一定のペースで語彙を獲得していきますが、この時期にたくさんの言葉を覚えていくことは事実です。)(Vocabulary Spurt)
この時期、子供はワーキングメモリが十分でないとされています。つまり、たくさん物を言われても、その一部しか頭の中に残っていないのです。ですが、逆に、「あんまり言葉が残らない」からこそ、「その少しの言葉を凄いスピードで覚えているのでは」と言われています。
このことについて、人間は本能的に理解しているようです。例えば、子供に話しかけるとき我々は無意識的に「赤ちゃん語」「赤ちゃん言葉」を使います。(学問的には、CDS=Child Directed Speechといいます。)
- 文法構造が単純で限られた言葉のみを用いた言葉
- 繰り返して呼びかける
- 少し高い声で(優しい声)で話す
- 大げさに話す
これらの特徴を持った「赤ちゃん語」を人間は無意識的に使っているのです。これは、子供の言語理解に則した話し方と言えるでしょう。前述の通り、子供は親からもらった言葉の一部しか取り込めません。それに則した話し方になっているのです。
乳幼児英才教育の効能
乳幼児に映像教育は無駄
- 我が子に早く話せるようになってほしい
- 自分の子供の発達を促してあげたい
そう思う親の気持ちは、ごくごく一般的にあるものでしょう。「幼児教育映像」なんてものもよく売られています。
ですが、このような映像教育を受けさせても無駄と言うことが分かっています(何もしないのと同じレベル)。むしろ、親が子供と積極的に勾留して話しかけることが、子供の言語発達に有用と言うことが分かっています。(Do Babies Learn From Baby Media?)
「子供は胎児のうちから親のことを認識している」と言われています。その養育者との交流は、何にもまして重要なのでしょう。
育児に関わるのは「親」だけじゃない!
「子供の発達には養育者との関わりが重要」と言われても、全ての親が子供につきっきりに世話をしてあげられるわけではありません。養親共働きなどしていたら、つきっきりのお世話は不可能です。
ここで「親」以外の養育者の存在が重要になってきます。NICHD Study of Early Child Care and Youth Development (SECCYD) Historical/For Reference Onlyによれば、養育者は常に「親」でなくても良いようです(親とずっといた子供と、親以外の養育者も育児に絡んでいた子供で言語発達に差は見られなかった)。
もともと人間は(もっと原始的な時代)、集団で子育てをしていました。そう考えれば、「親以外の養育者」に大きなデメリットは元々無かったと言えることも納得できます。(むしろ、親のみで育児を抱え込むことの方が、生物学的には「異常」かもしれません。)